Início / 恋愛 / <社会人百合>アキとハル / 第一話 アキとハル

Compartilhar

<社会人百合>アキとハル
<社会人百合>アキとハル
Autor: みなはら つかさ

第一話 アキとハル

last update Data de publicação: 2026-06-30 21:48:01

 頭痛ぁ~……。また呑みすぎちゃった。

 酒癖が悪いのが、私の欠点。てか、ハダカじゃん!

 ほんと、飲むと記憶トぶ・・からなぁ~……。

 はて、何か違和感。隣で寝息が……?

 視線を向けると、これまたネイキッドな女の子が、気持ちよさそうに爆睡中!?

 ど、どうしよう! どうしたらいいの!?

 ◆ ◆ ◆

「えーと、事情を教えてくれるかな?」

「いや、事情も何も、おねーさんから声かけてきたんですけど」

 眼の前で、正座してるショートカットの女の子は、今年二十歳になったかどうかぐらい。

 さすがに、互いに着替え済み。

 彼女は、ちょっと地味めのスカートルック。かといって、オシャレ心がないかといえば、ちゃんとあって。

「あー、オトナとして恥ずかしいんだけど、昨日飲み屋行った後のこと覚えてないんだわ……。よければ、教えてくれないかな?」

 今日は土曜で、職場は休み。というわけで、この子の素性を問いただすことに専念する。

「はあ。……それじゃ、わたし視点で、今に至るまでを説明しますね」

 ◆ ◆ ◆

 わたしは、行くあてもなく、駅高架下の、路傍の縁石に座っていた。

 あてもない、お金もない、無い無い尽くし。

 そんなとき、上機嫌で歩いてくる、おねーさんを見かけたのです。

 酔っぱらいかー。関わらないほうがいいかなーと、思っていたけれど。

「よーう! そこな少女! 表情暗いなー!」

 絡まれてしまった。どうしよう。

「どうした! 家出か何かか! よっしゃ! おねーさんが面倒見ちゃる! うちに来ーい!」

 ドンと胸を叩くおねーさん。

 どう見ても酔っ払いだけど、今のわたしには渡りに船。

 「お願いします!」というと、おねーさんはタクシーを捕まえました。

 そして、このマンションに連れてこられ、なし崩しに初めて・・・を……。

 ◆ ◆ ◆

「ちょ、ちょーっと待ったあ!! ナニソレ! 私が行きずりの女の子を招いて、さらに、その……!?」

 声が震える。

「はい。初めてでしたけど、優しくしてもらって……」

 ぽっと照れる彼女。慌てて布団をめくると、果たしてその証・・・が……。頭痛がぶり返してきた。

 スマホを手繰り寄せる私。

「あの、おねーさん、何を!?」

「ケーサツ! これじゃ私、ユーカイ犯じゃない! 身の潔白を説明しないと……」

「それだけはやめてください!」

 彼女が、スマホをひったくろうとする。

「家に……家に戻るぐらいなら、死んだほうがマシです!」

「よくわかんないけど、そうもいかないでしょ!!」

 しばし、大格闘。

 私のスマホは、彼女にひったくられてしまった。

「あー、もう! どーすりゃいいのよ!?」

 交番に駆け込む? でも、変な噂が立ったら困るなと、はたと気づく。

「あの、一生のお願いです! わたしをここに置いてください! 家事でもなんでも、しますんで!!」

 土下座する彼女。う~ん……。

「せめて、素性を教えてよ。このままじゃ話しにくいし。私は、市役所勤務のくれないアキ。あなたは?」

あおいハルと言います! ふつつかものですが、よろしくお願いします」

 深々と頭を下げる彼女。ふつつかものって、私、受け入れるとか一言も言ってないよ!?

 しかし……うーん、私の名前に合わせた偽名とも受け取れる、デキすぎた名前だけど。

 確認・通報しようにも、両方のスマホはハルちゃんの手の中。かといって、大事おおごとにはしたくないし……。つくづく、我が酒乱が恨めしい。

 すると、ぐうとお腹が鳴った。時計を見ると、お昼を回ってる。

「お腹空いたでしょ。テキトーに、スパゲッティーでもつくってあげるから、それ食べたら帰ってね」

「あの! わたしに作らせてください! ウデに自信アリなんで!」

 ほんとかな? とはいえ、「家事でも何でもする」という言葉は、偽りではないようだ。

「ふーん。じゃあ、お手並み拝見。えっと、調味料はここで……。冷蔵庫のものは、何でも使っていいから」

「お任せください!」

 テキパキと調理体制に入る彼女。

 すごいな。傍から見てても、鮮やかなお手並み。

 途中、ポッケのスマホをこっそり奪還しようと試みるけど、素早くガードされてしまう。むむむ。反射神経いいなあ。

「できました!」

 そんなことをやっているうちに、カルボナーラの出来上がり! 美味しそ~。

「いただきます」

 二人で合唱。

 ん! 美味しい! 自分で作っても、こんな美味しくならないのに!

「すごい! 美味しいよ、コレ!」

「お褒めに預かり恐縮です。仲の良かったメイドさんから、教えてもらったんです。茹で汁に塩を多めに入れるのがコツなんですよ」

 上機嫌で応える彼女。……って、メイド!? ナニモノなの、この子……?

「ごちそうさま」

 美味しかった~!

「さ、そろそろスマホを返し……」

 バッとポケットをガードされる。困ったね。

 ……しゃーない。テレビでも見るか。

「葵ハルさん、失踪事件の続報です。アオイグループ会長、葵吾文《あおい・ごもん》さんの一人娘、ハルさんの失踪から一日が経ちました。警察では事件の可能性も考慮し……」

 思わず、横でにこにこ笑顔の彼女を見る。テレビの手配人物そのものだ。アオイグループといえば、超大企業……!

「かーえーしーなーさーいー!」

「やーだー!」

 二人で、スマホの奪い合い。

 まずいな。こうして大騒ぎしてるだけでも、ご近所様の耳目が……。

 そして、先に息切れするのは、年上の私のほう。

「お願い……私の立場も考えて……私、一介の市役所職員なのよ……」

 肩で息しながら、彼女に乞う。惨めだけど、変な嫌疑とか、かけられるわけにいかない。

「わたしだって、一介の会長令嬢です……! 何の力もないけれど、親の敷いたレールに乗って生きるのは、もうイヤなんです……!」

 向こうも、息も絶え絶えに反論。親の敷いたレールに反発するご令嬢か……。こんな、マンガから抜け出してきたみたいな子が、現実に存在するとは。

 そのとき、不意にチャイムが鳴った。

「一旦休戦。隠れてて」

 小声で言うと、ハルちゃんはトイレに隠れました。

「はい、どちら様でしょう?」

「F警察署の者です。少し、お話を伺いたいのですが」

 ギャーッ!! 速攻特定された!?

 どうしよう? どうしたらいいの!?

 断るのも怪しいし。

 ええい!

「はい、どういったお話でしょうか」

 意を決して、平静を装いつつ、ドアを開けると、二人組の男性が立っていた。

「どうも。私、こういう者です」

 名刺代わりに、警察手帳を見せてくる。私服だから、刑事さん? うわ~……。モノホンですよぉ……。

「葵ハルさん失踪のニュースは、ご覧になりましたか?」

 うーん、ここはしらばっくれてもなあ……。

「はい。先ほど」

「それは話が早い。実はですね、昨夜あなたそっくりの女性が、ハルさんと思しき女性と、タクシーでどこかへ行ったという証言を得ましてね。で、ご自宅を突き止めまして。少し、お話を聞かせていただければと」

 ドキーン! やばい! 絶対にやばい!!

「えーとですね……その……」

 まずい。私、嘘がつけない性格なのよーッ!!

 刑事さんたちが頷きあう。

「お寛ぎのところ恐縮ですが、署までご同行願えませんか?」

 ひいっ!

「ちょっと待ったぁーッ!」

 そこに、トイレのドアをバーンと開けて、のしのしとやってくる張本人!

「たしかに、わたしが葵ハルです。このおねーさんは、誘拐犯とかじゃありません! わたしが、自分の意志で、こちらにお邪魔しているんです!」

 この急展開に、私も刑事さんも困惑!

 アイコンタクトを送り合う彼ら。

「そういうことでしたら、未成年でなし、我々はどうにもできませんね。ただ、お父様にご報告はさせていただきますが、よろしいですか?」

「どうぞ、ご勝手に!」

 腕組みして啖呵を切るハルちゃんに、「やれやれ」といった様子で肩をすくめて、刑事さんたちは帰っていきました。

「というわけで、よろしくね、おねーさん!」

 至極明るい調子で、肩をポンと叩いてくる彼女。

 なんか、私の意思に反して、どんどん引き返せなくなっていくぅ~!

 この先、どうなっちゃうんだろー? とほほ。

Continue a ler este livro gratuitamente
Escaneie o código para baixar o App

Último capítulo

  • <社会人百合>アキとハル   最終話 秋の実り

     ひゅうと、秋風が紅葉の葉を運びながら、私の頬をなでていく。 思えば、ハルちゃんと出会ってから、ちょうど一年か。「どーしたんです、おねーさん?」 恋人つなぎで、庭を一緒に散歩していた彼女が、声をかけてくる。 庭では、紅葉の葉が紅に染まっていた。「ん? 出会ってから、ちょうど一年だなあと思って」「もう、そんなになるんですね。大人になると、時間の過ぎ方があっという間になるっていいますけど、ほんとなんですね」 ハルちゃんも、目を細めて、柔らかくなった秋の日差しを見上げる。「あのときは、びっくりしたよ。朝起きたら、私もハルちゃんもネイキッドで寝てるんだもん」「あはは。本当に、お姉さんのワザ、ステキでした」「もーう、そういうこと言わないの。恥ずかしいじゃない」 口をとがらせて拗ねると、彼女が一層、愉快そうに笑う。「会長令嬢と知った時は、愕然としたっけなあ。まるで、漫画のヒロインかと思ったよ」「漫画のヒロインって、そうなんです?」「ものによってはね。それにしても、警察だの吾文さんだの押しかけてきた時は焦ったなあ」 愛しの彼女に、そっと肩を寄せる。「あの頃は、まだお父様と仲が険悪でしたからね」 彼女も、肩を寄せてきた。「お父様が倒れられて、幸か不幸か、父娘仲が改善しましたけど。……いや、幸と言っちゃいけないですね。でも、お父様、ずいぶん丸くなりました」「そうだね」 私も、ずいぶんな言われようをしたっけ。「そのしばらく前だよね。ミドリさんとハルちゃんが、ばったり再会したのは」「はい。あのときは、心臓が爆発しそうでした。二度と会えないと思っていたミドリさんが、眼の前にいるんですもん」 あれは本当に、偶然に偶然が重なった。たまたま映画を見に行って、たまたまピアノを弾いて、たまたまミドリさんが聴いていて。「おねーさんが必死にミドリさんを止めてくれて、助かりました。おねーさんがいなかったら、ミドリさんは私の手から、するりとすり抜けてしまうところでした」「詩的な表現だね」 詩といえば、ハルちゃんとユキさんは、デビューに向けて、仕事と両立しながら、必死に頑張ってる。すごいな。「ありがとうございます。でも、まさか公式二股とか、おねーさんから言い出すとは思いませんでしたよ。さすがに、びっくりしました」「あはは

  • <社会人百合>アキとハル   第三十二話 夏の星

     結果発表をまんじりともせず待つ日々。公式HPによると、審査が長引いているらしい。 仕事を終え、バスの中でツイスターを見ると、ついに結果発表が! 急いで公式HPに飛ぶと……最優秀賞……じゃない、優秀賞……でもない。じりじりと不安な気持ちで、画面を下にスクロールしていく。 あったあああああああ!! 審査員特別賞! たしか、募集時にはなかった賞のはず。賞金なし。プロデューサーがつき、デビューに向けてサポートします……だって。うーん、急遽設けられた末席かあ。 ちょっと残念な気持ちで帰宅すると、ハルちゃんとミドリさんが、笑顔で出迎えてくれました。「ちょっと惜しい結果だったね。もっと上、狙えると思ってたんだけど。でも、入賞は入賞だ!」 励ますつもりでそう言うと、「何仰るんです! 大金星ですよ!」と、聞き覚えのある声が。 ハルちゃんのスマホからだ。「だそうですよ、おねーさん!」 笑顔で画面を向けてくるので見てみると、興奮気味なユキさんが映っていた。「あのですね。賞レースの世界で、初めての投稿作が入賞なんて、自分で言うのもなんですけど、天才の所業ですよ!?」「そうなんですか?」「はい! 私も、小説賞で一次選考での落選を、何度繰り返したかわかりません。……初めての受賞が、小説ではなく歌っていうのがあれですけど、万々歳です!!」 へー。「これをお父様に伝えたら、今度こそ、心の底から喜んでくれてですね! 今度の日曜、真の祝賀会をしようって話になりました!」「おおー! おめでとう!!」 大学を続けるかどうか悩んでいた、ハルちゃん。思い切って音楽の道に進んだわけだけど、ピアノ講師以外の道も見えてきたわけだ。「いやー、印税でウハウハになったりするかなー?」 なんて青写真に思いを馳せていると、「いや、それは夢見すぎですね」と、一転して冷静なユキさん。「少なくとも小説だと、受賞後デビューしても、働きながら、副業として執筆活動する人がほとんどです」「意外と、渋い世界なんですね」「ですよ。売れっ子なんて、万に一人……いや、それ以下の選ばれし人なんですよ。音楽も、同じだと思いますよ」 ほんと、厳しい世界なのねえ。でも、地方公務員も、世間様が思うほど恵まれてないから、そんなもんか。「まあ、何にしても祝賀会楽しみですね!」 ウ

  • <社会人百合>アキとハル   第三十一話 春が来て

    「ただいま戻りました~」 今日も、お仕事頑張ったー! というわけでお屋敷に戻ると、ハルちゃんとばったり出くわした……というか、待ち構えていて、「おねーさん!」と、子犬のように抱きついてきました。 季節も春になり、福祉課自体は変わらないけど、別地区の担当になりました。こうしないと、不正する職員、悲しいけどたまにいるからね。実際、昔、岡山で問題になったらしい。「危ない、危ない! どーしたの、そのテンション?」 危うく倒れ込みそうになり、彼女を制する。「すみません。それでですね! 完成したんですよ、歌が!」 そういえば、そろそろ締切だっけ。「おー、そりゃめでたいね! ハルちゃん、頑張った!」 頭をなでてよしよしすると、「えへへ~」ととろけるお嬢様。かわいい。「吾文さんも、さぞ喜んでくれたでしょう?」「それがですね、『まだ入賞したわけではない。気を引き締めなさい』って塩対応で、お母様に、『こういうときは、素直に祝ってあげてくださいな』って、たしなめられてました」 はは。本当に、不器用な父親だなあ。大病して以降、ずいぶんカドが取れたんだけどね。「でもとりあえず、祝賀会を開こうって言ってくれて、お屋敷のみんなでパーティーすることになりました!」「おー、そりゃ楽しみだねえ!」 吾文さんも、リハビリのかいあって、杖が必要だけど、少しは歩けるようになっている。「はい! もちろん、ユキさんも招かれてますよ」「いつやるの? さすがに今日じゃないよね?」「今度の日曜です!」「りょーかーい! ところでお風呂入りたいな」「じゃあ、一緒に大浴場行きましょうよ!」 目をキラキラさせる彼女。「ミドリさんは、まだお仕事?」「はい」「じゃあ、お風呂はハルちゃんと二人っきりかあ~」 ひさびさかな、これも。 というわけで、楽しく流しっこするのでした。 お腹も空いてるし、さすがにリスキーなので、それ以上はしなかったけどね! ◆ ◆ ◆「今日は、不肖の娘、ハルが……」「あなた、ハレの場で、娘を不肖などというものではないですよ」「こほん。我が娘ハルが、賞向けの歌をご友人と完成させた記念に、気が早いが、祝賀会を開かせてもらった。日頃の奉仕に報いる意味もあるので、今日は大いに呑み、食べ、楽しんでほしい」 奥様に、最近ツッコミを入れられがちな吾文さんの挨拶

  • <社会人百合>アキとハル   第三十話 たまには

     どうも、最近オフは、やることがなくていけない。お掃除もお洗濯も、メイドさんたちがやってくれるしなあ。かといって、またメイドイン私……逆か。ま、それはちょっと辛いと理解できた。 というわけで、競馬中継など見ていたわけだけど、スターランサーが有馬で怪我し、療養中になってしまった。予後不良とかじゃなくてまだよかったけど、寂しいな。 もう一頭の推し、マリアージュベーゼも、パッとしない戦績が続いている。さっきも、六着に終わったところだ。高松宮では、ビシッと決めてほしいけどなー。 なんとも、気が沈みますなあ。 なんか、今日は視聴気分じゃないや。そういや、今日ミドリさんオフだっけ。たまには、ハルちゃん抜きでミドリさんと絡んでみようかな?「ス~マ~ホ~!」 某猫型ロボットの物真似をしながら、コール。「はい? どうされました?」「いやー、手持ち無沙汰だし、メイドさんのお手伝いは、私には無理だと悟ったんで、たまにはミドリさんと、なにかしようかと」 首筋をもみながら、提案する。テレビばっか見てたら、首凝っちゃったよ。「そうですね……読書も、目が疲れましたので、小休止中でして。構いませんよ」「じゃあ、とりあえず、私の部屋で」「かしこまりました」 冷蔵庫から炭酸水を取り出して飲んでると、ノックとともに「私です」と、ミドリさんの声が。「いらっしゃ~い。入って、入って!」「お邪魔します」 彼女が入ってくる。「さーて、ミドリさん。呑みましょうか!」「ええ!? 唐突ですね? というか、屋敷のお酒を勝手に開けるわけには……」 高級酒ばかりですもんね。「ノンノン。私の私物~。自分用に、こつこつ買い溜めてるんですよ」 と、クラフトビールを二缶出す。「おつまみも、ありますよ~。いきましょうよ!」 乾き物を、色々取り出す。「そうですね、久しぶりにこういうのも、悪くないかもしれません。お嬢様がいらっしゃらないのが、残念ですが」「一時間ぐらい前、ピアノ室覗いてみたら、ユキさんとかなりガチな話してましたよ。邪魔しないほうが、いいかもしれませんね」「左様ですね。では、二人で呑みましょう」 「そうこなくっちゃ!」と、ビールグラスを出し、慣れた手付きで注ぐ。美味しさを引き立てる白い泡が、シュワッと膨らむ。「乾杯!」 グラスを打ち鳴らし、ごくごく。

  • <社会人百合>アキとハル   第二十九話 一日メイド

     こんこん、がちゃ。ハルちゃんの部屋……。いない。 ピアノ室かな? てくてく……こんこん、がちゃ。ビンゴ!「ハールーちゃん。競馬見ーましょ」「すみません、おねーさん。今、取り込み中で」 スマホからも、ユキさんの声が聞こえる。作曲中か……。 ハルちゃん、曲自体もあれからブラッシュアップするとのことで、ピアノ室にこもることが多くなっている。 ミドリさんは仕事中でしょ。だからって、休日まで同僚とつるみたくないしなあ。 私にも、楽才なり詩才なりあったらな。ハルちゃんとユキさんの間に混じれるのに。 ただ食客やってるのもあれだし、今日は皆さんのお手伝いでもしますか!「ミドリさーん」 とりあえず、取っ掛かりとしてミドリさんを捕まえ、呼び止める。「はい、なんでしょうか」「私、暇を持て余してまして。で、ただ食客やってるのもアレだし、お手伝いしようかなあ、なんて」「ありがたいお話ですが、私の一存では決めかねますので……メイド長に、話を取り付けましょう」 というわけで、メイドさんたちが、わらわらとたむろしてお掃除している、エントランスへ。「……というわけなのですが」「なるほど、ありがたいことです。でもその格好では……余ってるメイド服、召されてみますか?」 おお! リアルメイド服! まさか袖を通す機会が訪れるとは。「はい、ぜひ!」 そんなわけで、更衣室へ。おお、これがメイド服! 何かワクワクするな!「おまたせしました」 着替えて、しゃらららん。「ではさっそく、拭き掃除をお願いします」 と、水入りバケツと雑巾をメイド長から手渡されました。 おっほう! さっすがメイド長! 着替えたてホヤホヤのボランティアにも、容赦なしですね! 彼女が、葵家の秩序を守っているのだなあ。「あの、メイド長さん」「長野と呼んでください」 おさの、おさの……あれ?「ひょっとして、シェフ長の……」「はい、彼は夫です。それで、ご質問は?」「あ、はい。ええと、どのあたりを中心に拭けばいいですか?」 メイドさんたちがめいめい動いているので、文字通りどこまでクリアされてるか、わからないのだ。「でしたら……」 と、結構な広範囲を指定される。うっひゃ~! でも、自分で言いだしたことだもんね! やるぞー! ◆ ◆ ◆「みなさん、休憩にしま

  • <社会人百合>アキとハル   第二十八話 粋な計らい

    「お父様、わたし、作曲の賞に応募してみようと思うんです」「おお、そうかそうか。お前も頑張ってるのだな」 万年筆を右手に持ち、自室でハルちゃんの報告を聞く吾文さん。リハビリのため、文字を書く練習をしていたらしい。何十字もの「あ」や「い」で埋め尽くされた紙が見える。 かつての彼はそこにはおらず、娘同様努力する、人当たりのいい、おじ様がそこにいた。「それで、お父様にも試聴していただきたくて……。音楽、かけてもいいでしょうか?」「いいとも。聞かせてくれ」 ハルちゃんが、ファイルを再生しながらスマホの音量を調節する。「……いい曲だ。これだけで応募できるんじゃないか?」「いえ、作詞も必要で……。わたし、作詞はからっきしなので、ミドリさんのご友人のご助力を、いただいているんです」「ほお……」 筆を止めず、同時に話を聞くという器用なことをしながら、感心する彼。「そういえば、奥様のお姿が見えませんね」 いつもなら麗さんのいる席で主人の世話をしている辻さんを見て、ミドリさんが素朴な疑問を口にする。「今日は、一日羽根を伸ばしてもらっている。オレの世話で、ずっと苦労させっぱなしだったからな」 吾文さん、ほんとに丸くなって……。「そういえば、ハルも紅さんも、皆に混じってまかないを作ってるんだったかな?」「はい。わたし……こういう言い方は失礼ですけど、アキさんと共同生活して、世間様の暮らしを体験しました。それで、わたしもぬるま湯に浸かっていてはいけないと思うようになったんです。もっとも、衣と住に関しては、贅沢させていただいてますけども……」 とはいえハルちゃん、オフの日は率先してメイドさんたちの仕事を手伝っている、パワフルさんだ。「ならば、食も遠慮せず、食べなさい。その、夏野には他の使用人の手前、それはさせられないが」 つ、と、頷いて肯定するミドリさん。「それが嫌なんです。私にとってミドリさんの手料理は……こういう言い方よくないですけど、母の味ですし、彼女と同じものを食べたいんです」「ふむ……」 吾文さん、筆を一旦置き、左手で顎を撫でながら、思案する。「なら、慰労会を開こう。屋敷の者、全員参加のパーティーだ。そこでなら、夏野も遠慮は必要あるまい」「よろしいのですか!?」 びっくりミドリさん。「いいともいいとも。考えてみれば、がむ

Mais capítulos
Explore e leia bons romances gratuitamente
Acesso gratuito a um vasto número de bons romances no app GoodNovel. Baixe os livros que você gosta e leia em qualquer lugar e a qualquer hora.
Leia livros gratuitamente no app
ESCANEIE O CÓDIGO PARA LER NO APP
DMCA.com Protection Status